心の手帳 74号(2024年10月)

心の手帳74
新たな始まり
 
 夏の喧騒が去り、空気がひんやりと澄んできた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 木々が赤や黄に染まり、朝の霧の中で輝く様は絵画のようであり、落ち葉がカサカサと音を立てて、秋の風が心地よい冷たさを運んできます。市場には秋の味覚が並び、夜が長くなると星空がより一層美しくなります。
 また、どこからともなく「いしや~きいも~」と、石焼き芋販売車(金時というそうです)が町を巡る季節でもありますね。この文化は、昭和の時代から続く風物詩。焼きたてのお芋を頬張る瞬間は、日常の中にある小さな幸せを教えてくれます。
 秋は新たな始まりを感じさせる季節だとも言われているそうです。静かで穏やかな秋の訪れを楽しみながら、心も体もリフレッシュして過ごしていきたいですね。 

「ドングリ遺伝子」

村澤 和多里(心理臨床センター研究員?本学教授)
 むかしから私はヘアースタイルにあまりこだわりがない。それで、できるだけお金をかけずに済ませようとしてるのだが、最近どうもうまくいかない。
 ある日、散髪から帰ったら中2の娘が「パパ。髪切った?」と聞いてきた。私がうなずくと、 娘はすかさず「いくらで?」と聞いてきた。私が「1600円」というと、娘は「なるほどね」と納得したあと、「今度から3500円くらいのとこにしたらいいと思うよ」とニヤリと笑った。
 次の日、学部長の山本彩先生から「髪切った?」と聞かれた。私が「娘には評判悪いんだよね」というと、山本先生は「だろうね、ドングリみたいだもん」と一刀両断した。そして、「でもマニアな人には受けるかもしれないから、いまの写真でブロマイドとか作ったら?」とアドバイスをくれたが、私は拒否した。
 その夜、家族と食事をしている時に、高2の息子が私のヘアースタイルを笑いながら、近々ある高校のイベントで司会をするので自分も髪の毛を切りに行くという話をしていた。何かひっかかりを感じた私は「あまり安く済ませようとするな」と助言をした。
 それから二日ほどして、息子が帰宅するなり、「や、やられたぁ」と部屋にこもってしまった。私は「どうした、大丈夫か?」と部屋をのぞいた。息子は布団にくるまりながら「俺もドングリになってしまった」とうめき声をあげている。見ると、眉毛の2センチくらい上で一直線にそろえられており、まさしくドングリのようになっていた。私が「い、いくらで切ってもらったんだ?」と聞くと、息子は「1600円」と答えた。カラオケ代を捻出するために節約したらしい。私の嫌な予感は的中した。私は「だから3500円渡されただろ」と苦い顔をした。
 しかし、息子はタフだった。「でもいいや。俺、ドングリヘアーを流行らせるわ」とおもむろにギターを弾きはじめた。私はどうやって流行らせるんだろうと思ったが、とりあえず「頑張れよ」と応援することにした。大丈夫、髪の毛は一月したら伸びるから。

実習生(大学院生)のつぶやき

 読書が趣味の私は、新たに読みたいものが増え続け、幸せなことに積読が増すばかりです。「あれも読もう、これも読もう」と日々を過ごしているうちに、ふと今まで読んだものをどれだけ覚えているのかと考えることがあります。たくさんの作品に触れようとするうちに、いつの間にかそれが使命感のようになっていたのかもしれません。
 そんな中、ふと立ち止まり、以前に読んで面白かったものを、もう一度楽しむのも良いのではないかと思う今日この頃です。
 新しい作品にある喜びも大切ですが、過去に心を動かされた作品を再び味わうことで、新たな発見や感動があるかもしれません。
 皆さんは、どんな作品を思い浮かべるでしょうか。     (R.O.)